*第一話『穴』*探偵とは?-3ページ-
生まれつき寝起きの悪い彼女は、布団を支えにしたまま、ゆっくり、極めてゆっくり目を覚ますのだ。そして、起きるためだけに、長いときは一時間を費やすこともある。
小声で唸りながらもじもじしている彼女を眺めても面白くないので、彼女がまともに動けるようになるまで、少し経歴を紹介しよう。重複してしまうが、職業は探偵だ。このご時世では、探偵は準警察官という極めてあやふやな扱いになっている。
探偵業を営む為には国家資格が必要なのだが、その名称は「準捜査員資格」と呼ばれており、一級から三級まである。
三級は民事事件、ニ級は、万引き、痴漢などの軽犯罪であり、一級は殺人などを含むほぼすべての事件を捜査する権利が与えられる。
この物語の主人公・・・未だ布団にしがみついている藤心あきらの持っている資格は一級であり、その気になればどんな事件でも捜査できるのだ。
次に彼女の趣味や信条について説明しよう。
完全な無神論者で、犬や猫を含むあらゆるペットに興味がなく、またペットを溺愛している人に対する興味もない。
一般人に比べると冷めた所があるが、決してひねくれ者というわけではない。神仏を盲信しないあたりは、ある意味、常識的とも思えるし、ペットに興味を持たないのは、彼女自身の性格や生活習慣が、ペット・・・特に猫とよく似ているからかもしれない。現に、彼女を知っている人たちのなかで、彼女を良く思っている人は「放っておけない人」とか「つい甘やかしちゃうタイプ」だとか、そういう評価を下している。